図解でわかる!ヒメアカタテハを見分ける3つの特徴|好む花や食草を植えて庭に招こう
「あの蝶は、何という蝶なのだろう?」
庭や公園で優雅に舞う蝶に出会って、その名前を知りたい、種類を見分けられたらと思ったことはありませんか?
蝶を識別できれば、その蝶が好む植物を庭やベランダに植えて、招くこともできます。
この記事では、「ヒメアカタテハ」の生態と、見分けるための3つの特徴を、図解を交えてわかりやすく解説します。
また、ヒメアカタテハが好む花や食草についても紹介し、あなたの庭にヒメアカタテハを招くためのアイデアを提案します。
この記事を読めば、次にヒメアカタテハを見かけたとき、きっと自信を持って見分けられるようになり、その魅力をもっと深く楽しむことができるでしょう。
ヒメアカタテハの生態や習性
学名: Vanessa cardui
科名:タテハチョウ科
サイズ:中型
成虫の出現時期:4~11月(東京近郊)
年間の発生回数:多化性
越冬態:温暖な地域では成虫、やや寒冷な地域では幼虫
分布:北海道・本州・四国・九州・南西諸島
生息環境:開けた明るい草地
幼虫の食草:キク科・イラクサ科
成虫の食性:訪花性が高く、各種の花を訪れる
飛び方:明るい場所をすばやく不規則に飛ぶ
ヒメアカタテハは、とても移動性が高く、世界中に広く分布する「コスモポリタンな蝶」です。
翅色はアカタテハに比べてやや淡い橙色をしています。
秋になるにつれて個体数が増えていき、よく見られるようになります。
オスは梢や葉の先に止まって縄張りを守る占有行動を見せることがあり、地面に止まる姿も見られます。
越冬の形態は地域によって異なり、暖かい地域では成虫で越冬しますが、やや寒冷な地域では幼虫で越冬することが一般的です。
ヒメアカタテハを見分ける3つの特徴
① 全体の色や模様【表】
【表】前翅の先端は黒く、白色の斑紋が点在する
後翅はほぼ全体が橙色に黒班のヒョウ柄だが、胴体付近は褐色にぼやけている
② 全体の色や模様【裏】
【表】前翅は表に似ていて、鮮やかな橙色の帯模様がある
後翅は明るい黄褐色で、複雑な模様がある
③ 後翅の縁取りの色
【表】後翅外縁の縁取りは、橙色の地色に小さな黒の斑紋が並んでいる
ヒメアカタテハはアカタテハよりも一回り小さい。
オスかメスかは腹部や翅の幅や丸みなどで識別するが、遠目で見分けるのは難しい。
「身近なチョウ」の中ではヒメアカタテハとよく似ている「アカタテハ」、少し似ている「ツマグロヒョウモン」や「キタテハ」の記事です。
ヒメアカタテハを惹きつける植物
自宅の庭やベランダに蝶を招きたいなら、その蝶を惹きつける植物を植えるのが効果的です。
蝶を惹きつける植物には、「食草」と「蜜源植物」の二種類があります。
幼虫のための食草と成虫のための蜜源植物を両方揃えることで、ヒメアカタテハが好んで訪れる庭をつくることができます。
幼虫の食草
蝶の幼虫は特定の植物を食べて成長します。
これらの植物は「食草」や「食樹」と呼ばれます。
蝶のメスは卵を産むために自分たちの食草を探しているので、ガーデンに食草を植えると蝶が訪れる確率がぐっと高まります。
食草は、蝶の種類によって異なります。
ヒメアカタテハの幼虫は、キク科やイラクサ科の植物を食草としています。
キク科やイラクサ科の植物には次のようなものがあります。
- ハハコグサ(キク科)
- ヨモギ(キク科)
- ゴボウ(キク科)
- シュンギク(キク科)
- カラムシ(イラクサ科)……など
キク科やイラクサ科の植物の中で、雑草として扱われているものは、根が広がりやすく繁殖しやすいため、庭に植えると手入れが大変になることがあります。
そのため庭植えにはあまり向いていません。
しかし、キク科やイラクサ科の植物は道端や公園などによく見られるため、自宅のまわりに草地があれば、ヒメアカタテハが庭に訪れる可能性も高まります。
ヒメアカタテハが好む蜜源植物を庭に植えて、訪れるのを待ちましょう。
それでもキク科やイラクサ科の植物を育てて、ヒメアカタテハのライフサイクルを観察してみたい場合は、ゴボウやシュンギクといった家庭菜園でお馴染みのキク科野菜を選ぶと良いでしょう。
ハハコグサやヨモギに比べて人気はやや劣るようですが、ゴボウなどは「人間が収穫したい根」と「幼虫が食べたい葉」とでうまく分け合うことができるので、おすすめです。
幼虫は食草の葉を糸で綴り合わせて包み、餃子のような袋状の巣を作って、その中で葉を食べます。
何度も巣を作り直しながら成長し、最後は巣から離脱して付近の草木などで蛹になるようです。
成虫が好む蜜源植物
蝶の成虫は、花の蜜を主なエネルギー源としています。
しかし、すべての花が蝶にとって魅力的というわけではありません。蝶が好む花にはいくつかの条件があります。
- 蜜が豊富に含まれていること:蝶は蜜の多い花を好みます
- 蜜を吸いやすい形状であること:蝶が簡単に蜜を吸える形状の花が魅力的です
このような蝶が好んで蜜を吸う花を「蜜源植物」や「吸蜜植物」または「吸蜜源植物」と呼びます。
ヒメアカタテハに人気があるとされる蜜源植物には、次のようなものがあります。
- バーベナ・ボナリエンシス(サンジャクバーベナ)
- ランタナ / コバノランタナ
- ムシトリナデシコ
- ブッドレア
- 百日草(ジニア)
- フジバカマ
- アベリア
- コスモス / キバナコスモス
- マリーゴールド
- 千日紅
- モナルダ
- ツワブキ
- オカトラノオ
- エキナセア
- オミナエシ / オトコエシ
- 宿根アスター(クジャクアスター)
- リョウブ
- アザミ
- タンポポ……など
この他にも、さまざまな蜜源植物があります。
庭に植える花を選ぶ際には、成虫が活動する4月から11月の間、常に花が咲いている状態を目指して、異なる花期の植物を組み合わせましょう。
また、アカタテハは熟した果実や樹液からも汁を吸うことがありますが、ヒメアカタテハは熟した果実や樹液には集まりません。
チョウは、花に蜜があるかどうかを紫外線で確認できると言われています。花は紫外線を反射する特殊なパターンを持っており、これが「着陸マーク」となってチョウを誘導します。
それぞれのチョウが好む花の色の研究も進んでいるようです。
私の庭でのヒメアカタテハは、ランタナ、コバノランタナ、サンジャクバーベナ、千日紅などでよく吸蜜しているよ。
蝶が好む花「蜜源植物」に関する記事を一覧でご紹介しています。
ヒメアカタテハが舞う庭を作るためのヒント
蝶は種類によって生息している環境が異なります。
蝶を庭に招くためには、その蝶が自然に暮らしている環境を参考にすると良いでしょう。
ヒメアカタテハは、日当たりの良い公園や田畑、河川堤防の周辺などの開けた明るい草原環境によく見られます。このような生息環境に寄せて庭をデザインしましょう。
- 日当たりと風通しを確保し、庭全体に開放感を持たせる
- ヒメアカタテハを惹きつける蜜源植物や食草をバランスよく配置する
- 成虫が活動する4月から11月の間に花が咲き続けるよう、植物の選定と手入れを行う
- 幼虫で越冬することもあるので、冬には越冬対策として、食草に霜よけを施す
さらに、無農薬でのガーデニングを心がけることで、ヒメアカタテハにとって安全で快適な環境を提供することができます。
バタフライガーデンづくりの最初の一歩を解説した記事です。
まとめ
ヒメアカタテハは、鮮やかな橙色の翅が魅力的な蝶です。
この記事で紹介した3つの特徴を押さえれば、ヒメアカタテハを何度か観察するうちに、自信を持って識別できるようになるでしょう。
また、幼虫の食草や成虫の蜜源植物を植えることで、あなたの庭にもヒメアカタテハを招くことができます。
ぜひ、ヒメアカタテハが舞う庭づくりに挑戦してみてください。
皆さんのガーデンにやって来たヒメアカタテハの様子や、好んでいる花などについて、ぜひコメントでシェアしていただけると嬉しいです!
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