ヒガンバナ(彼岸花)は蝶が好きな花!特に好まれる種類の紹介や育て方、増やし方について
蝶が舞うバタフライガーデンを夢見ていませんか?
美しい花や蝶を楽しむ庭づくりは、庭の生態系の保全にもつながります。
今回ご紹介するのは「ヒガンバナ」です。
アゲハやクロアゲハなど、アゲハチョウ科の蝶たちに人気のこの花を植えることで、住宅地の庭やベランダにも蝶を招くことができますよ!
この記事では、蝶が好むヒガンバナの種類、その育て方と増やし方について詳しくお伝えします。
さらに、より多くの蝶を惹きつけるポイントにも触れています。
ヒガンバナを植えて、花と蝶が織りなす自然豊かなバタフライガーデンをつくってみませんか?
蝶が好きな花、ヒガンバナ
学名: Lycoris radiata(リコリス・ラジアータ)
英名::Red Spider Lily / Hurricane Lily
別名:マンジュシャゲ(曼珠沙華)
科名:ヒガンバナ科 ヒガンバナ属(リコリス属)
原産地:中国(日本にも古くから帰化)
形態:球根(多年草)
草丈:40~50cm
開花期:9月(秋の彼岸頃)
耐寒性:強い
耐暑性:強い
ヒガンバナはリコリスの仲間で、園芸店などでは「リコリス」という名前でたくさんの園芸種が流通しています。
日本で秋の風物詩として親しまれている真っ赤なヒガンバナは、「リコリス・ラジアータ(Lycoris radiata)」という種類です。
蝶が特に好む種類は、原種に近いヒガンバナ
蝶にとって理想的な訪花対象は、良質な蜜が多い花です。
蜜が豊富なのは、あまり改良が進んでいない品種です。
品種改良は、美しい見た目にするためや、育てやすい強健な性質を手に入れるためなど、人間にとっての有用性を目的に行われています。
その過程で、蜜が退化していくことも多く、園芸品種の中には蜜で昆虫を惹きつけなくなってしまっている花もあるそうです。
「蝶と共に花を楽しむ」という観点からヒガンバナを選ぶ場合は、原種のヒガンバナに近いものを選ぶと良いでしょう。
日本の田畑の畦道や土手などでよく見かける真っ赤なヒガンバナ「リコリス・ラジアータ(Lycoris radiata)」は原種に近く(原種の三倍体)、蝶にとても好まれています。
「シロバナマンジュシャゲ(Lycoris albiflora)」は、「リコリス・ラジアータ」と「ショウキズイセン(ショウキラン)」との自然交雑種のようで、蝶に好まれています。
もちろん、他の種類のヒガンバナにも蝶は来るかもしれません。
園芸店などで流通している苗の多くは、原種ではなく園芸種なので、その中から、原種の面影がよく残っている品種を選ぶと良いでしょう。
- 花色が赤い
- 反り返ってカールしている花弁の幅が狭い
- 雄しべや雌しべが長く突き出ている
ヒガンバナには大型の蝶がよくやって来る
ヒガンバナは、アゲハやクロアゲハなどアゲハチョウ科の蝶たちにとても好まれています。
しかし、他の科の蝶はあまりやって来ないかもしれません。
花の構造が大ぶりなので、大型の蝶に向いているようです。
蝶は蜜を紫外線や花色で見つける
蝶は紫外線を見ることができるため、人間とは異なる色彩の世界を見ています。
紫外線で蜜の有無を確認する能力があり、さらに優れた色覚を持つため、花の色でも見分けています。
蝶の種類によって好む色が異なると言われているので、どの花色にどんな蝶がよく訪れているか観察するのも楽しいですよ。
ヒガンバナの育て方
ヒガンバナに多くの花を咲かせるためには、植物を適切に管理する必要があります。
植物を適切に管理し、健やかに育てることは、病害虫の予防にも効果があります。
ヒガンバナを健康に育てるための覚書
- 日当たりを好むが、明るい半日陰でも育つ
- 加湿にならないよう、水はけのよい土づくりをする
- 根が深く伸びるのでしっかり耕しておく
- 地植えでは球根1~2個分の深さに植えつける
- 鉢植えでは根の伸長スペースを広く取るために浅植えにする
- 数年間植えっぱなしでも大丈夫
- 植えっぱなしにする場合は、球根の間隔を広めに植えつける
ヒガンバナは、夏に葉を枯らしてから秋に花芽を出すまで、地上部がなくなります。
地植えの場合、どこに植わっているのか見失わないために、目印をつけておくと良いでしょう。
ヒガンバナを訪ねてくる大型のアゲハチョウ科の蝶たちが飛びまわりやすいように、少し開けた場所に植えつけるのがオススメです。
バタフライガーデンでは病害虫の予防が大切
蝶は農薬の影響を受けやすいため、バタフライガーデンでは農薬を使えません。
ヒガンバナに発生しやすい病気や虫を把握し、予防に努めましょう。
ヒガンバナがかかりやすい病気
ヒガンバナは比較的病気に強く、注意が必要な病気はほとんどありません。
ヒガンバナにつきやすい虫
ヒガンバナは比較的虫の被害が少なく、注意が必要な虫はほとんどいません。
ヒガンバナの増やし方
ヒガンバナは球根の分球で増やすのが一般的です。
日本で親しまれている真っ赤なヒガンバナ(リコリス・ラジアータ)は、三倍体なので不稔性であり、種をつけません。
分球
ヒガンバナは分球によって簡単に増やすことができます。
最適な時期は、6月から8月頃です。
葉が黄変したら掘り上げ時です。
球根が傷つかないように、慎重に掘り上げます。
大きく育った親球根には子球根ができているので、無理なく分球できそうなところで分けます。
球根は乾燥しないように管理して、早めに植えつけてください。
ただ、植えっぱなしでも年月をかけて自然に分球し、花数も増えていきます。
より効果的に蝶を招くには
ヒガンバナはアゲハチョウ科の蝶にとって非常に魅力的ですが、他の蝶を惹きつける植物と組み合わせて植えることで、さらに魅力的なバタフライガーデンをつくることができます。
蝶を惹きつける植物には、大きく分けて「蜜源植物」と「食草」の二種類があります。
ヒガンバナと一緒に植えたい、蝶の蜜源植物
蝶が好んで蜜を吸いに来る「蜜源植物」には、身近な花もたくさんあります。
- バーベナ・ボナリエンシス / バーベナ・リギダ
- ブッドレア(バタフライブッシュ)
- ランタナ / コバノランタナ
- ムシトリナデシコ(コマチソウ)
- 百日草(ジニア)
- 千日紅
- コスモス / キバナコスモス
- マリーゴールド
- メランポジウム
- フロックス
- モナルダ(タイマツバナ)
- リアトリス
- フジバカマ
- オミナエシ / オトコエシ
他にもまだまだありますよ。
蝶が好きな花「蜜源植物」を扱った記事を一覧で紹介しています。
蜜源植物について書かれた『蝶が来る庭』という本の紹介記事です。
蝶を呼ぶ力は、食草が最強
蝶の幼虫は特定の植物を食べて成長します。
これらの植物は「食草」や「食樹」と呼ばれます。
蝶のメスは卵を産むために自分たちの食草を探しているので、ガーデンに食草を植えると蝶が訪れる確率がぐっと高まります。
食草は、蝶の種類によって異なります。
例えば、アゲハチョウならミカン科の植物、モンシロチョウならアブラナ科の植物が食草です。
「身近なチョウ」と呼ばれる、住宅地の庭やベランダにもやって来る蝶の中で、ガーデンに招きたい蝶がいるのなら、その蝶の食草を植えてみてください。
幼虫が苦手でない方には、おすすめの方法です。
蝶の幼虫の「食草」を扱った記事を一覧で紹介しています。
お庭やベランダにもやって来る「身近なチョウ」を扱った記事を一覧で紹介しています。
「身近なチョウ」のリストが載っている『日本のチョウ』という本の紹介記事です。
蝶が快適に過ごせるような環境づくり
魅力的なバタフライガーデンをつくるには、蝶が好む環境を整えることも重要です。
例えば、日当たりや植物の茂り具合を蝶の生息環境に合わせてデザインし、休憩場や風よけになる低木や茂みを設けることも大切です。
また、自然と調和するエコなガーデニングを取り入れることも考えましょう。
「蜜源植物」「食草」「蝶が快適に過ごせるような環境づくり」と、蝶へのおもてなしを考え出すと、その楽しみは尽きません。
お庭やベランダを、バタフライガーデンに
この記事では、アゲハチョウ科の蝶が好むヒガンバナの種類や育て方、より多くの蝶をガーデンに招くためのポイントについて紹介しました。
蜜をもつ植物は、蝶や蜂などの花粉媒介者(ポリネーター)を引き寄せるために花を咲かせています。
バタフライガーデンでは、美しい花と蝶の関係を楽しめるだけでなく、庭の生態系が豊かになる過程を通じて、自然とのつながりを感じることができます。
ヒガンバナをガーデンの一角に植えることから、バタフライガーデンを始めてみませんか?
バタフライガーデンづくりの最初の一歩はこちらの記事からどうぞ。