蝶の食草|お庭にカタバミを植えるとヤマトシジミがやって来る!
「うちの庭にも蝶がやって来ないかなぁ」と思ったことはありませんか?
「蜜源植物」や「食草」といった蝶が好む植物を植えると、住宅地の庭やベランダにも蝶はやって来ます。
たとえば、「カタバミ」はあまり気に留めないほど身近な野草ですが、「ヤマトシジミ」という蝶の食草でもあります。
蝶は卵を産むために自分たちの食草を探していますから、お庭やベランダに食草を植えれば、蝶がやって来る確率がぐっと高まります。
あなたのガーデンにもカタバミを植えて、白くて小さい可憐な蝶「ヤマトシジミ」を招いてみませんか?
ヤマトシジミは白くて小さい可憐な蝶
ヤマトシジミは、モンシロチョウやアゲハチョウと並んで、私たちの身近でよく見られる蝶のひとつです。
都市部でもよく観察されています。
ヤマトシジミは小型の蝶なので、大型で目を惹くアゲハチョウなどと比べれば、少し地味な印象ですが、行動範囲が狭いので、ガーデンを気に入ってもらえれば、一日中滞在しているのではと思うほど、目にすることもできます。
ヤマトシジミの生態
- シジミチョウ科
- 小型
- 本州・四国・九州・沖縄に分布
- 成虫が活動するのは4~11月ごろ(多化性)
- 越冬態は幼虫
- 訪花性が高い
翅の裏側は白地に小さな黒斑が入っています。
表側は黒地に青い鱗粉が輝いて、がらりと印象が違います。
ヤマトシジミの特徴や見分け方などについては、下の記事で詳しく紹介しています。
ヤマトシジミの卵と幼虫と蛹
卵
ヤマトシジミは、食草の葉の裏に卵を産みます。
卵は、球体を上から押したような扁平な形で、白い色をしていきます。
幼虫
孵化した幼虫は何度か脱皮しながら大きくなります。
体全体が黄緑色で、モンシロチョウの幼虫などと比べると、ずんぐりとした形をしています。
まれに、赤紫色の個体もいるようです。
若齢の幼虫は、葉っぱの裏側だけを舐めるように食べるので、障子やステンドグラスのような光を通す模様が入った葉が出来上がります。
そんな「食痕」があるカタバミの葉を見かけたら、幼虫を探すチャンスですよ!
蛹
ヤマトシジミの幼虫は、食草の茎の根元などで蛹になります。
糸をかけて体をくくりつける「帯蛹型」です。
蛹の色は、黄緑色系と淡褐色系の2タイプあります。
ここまで見守って来ると「無事に羽化してくれ」と祈る日々になります。
ヤマトシジミの食草はカタバミ科の植物
自宅の近所をぐるっと一回りすればきっとどこかで出会う、カタバミはそのくらい身近な野草です。
本州から九州にかけて分布している多年草です。
カタバミの葉はハート形が3枚合わさった形をしています。
小さくて鮮やかな黄色の花を春から秋まで咲かせます。
ヤマトシジミはカタバミの花を蜜源植物としても楽しんでいるようです。
食草となるカタバミ科植物の種類
蝶の幼虫は、それぞれ種類によって特定の「食草」を食べて成長します。
ヤマトシジミの幼虫の食草はカタバミ科の植物で、次のようなものがあります。
- カタバミ
- オッタチカタバミ
- アカカタバミ
同じカタバミ科でも、ムラサキカタバミやイモカタバミでは育たないようです。
カタバミの入手の仕方
カタバミは、わりとどこにでも生えているので、自宅の敷地の日当たりの良い場所を見回ってみると、すでにどこかに生えているかもしれません。
カタバミは、通常、園芸店などでは取り扱っていません。
近所を散歩してみて、見つけたら、種をもらってきて蒔きましょう。
その際、できれば、平べったく広がる草姿をしている在来種のカタバミを選びましょう。
立ち上がった草姿のものはオッタチカタバミという外来種で、ヤマトシジミの食草にはなりますが、栽培して繁殖させるという点から考えると、外来種ではなく在来種のものが適しています。
葉が赤紫色をしているアカカタバミも在来種で、ヤマトシジミの食草になりますが、カタバミほどには人気がないようです。
カタバミの育て方
カタバミは丈夫で育てやすい植物です。
- 日当たりを好む
- 排水の良い土を好む
カタバミは雑草として扱われることもあるように、繁殖力が高いです。
あまり増えて欲しくない場合は鉢などで管理し、種ができたらはじける前に摘み取りましょう。
カタバミの増やし方
食草はある程度の量が必要です。
ヤマトシジミの幼虫は小さいので、エサ不足が問題になることはあまりないかもしれませんが、卵をたくさん産み付けらる場合に備えて、ある程度の量を栽培しておくと安心です。
カタバミは繁殖力が高いので、放っておいても、地を這う匍匐茎や種で増えていくと思います。
種まきは、春または秋が適しています。
発芽するまで蒔き床が乾かないように、霧吹きなどで定期的に水やりをしてください。
年間を通じた食草の管理
ヤマトシジミは年に数世代を繰り返す多化性の蝶です。
多化性の蝶の活動シーズン中、いつでも食草を提供するためには、年間を通した食草管理が必要です。
カタバミの提供スケジュール
ヤマトシジミの活動期間は早春から晩秋までです。
これはカタバミの生育期間と重なるため、違う特性を持つ食草をリレーさせるような提供スケジュールを組んだりしなくても問題ありません。
ヤマトシジミは幼虫の姿で越冬します。
カタバミは霜よけできれば冬の間も葉を残します。
幼虫は真冬は活動的ではないので、あまり食べてはいないようですが、冬の寒さから身を守る隠れ家としてもカタバミは活躍してくれます。
食べられた食草の回復
カタバミの株が小さい場合、葉っぱを幼虫に食べ尽くされてしまうこともあります。
食べられてしまった株には、しばらく回復期間を設ける必要があります。
植物が再び葉を芽吹かせて元の状態に戻るまで、養生させてあげましょう。
回復中の植物に新たに卵が産み付けられてしまわないように、保護ネットなどを掛けると効果的です。
食草の提供方法
ヤマトシジミが訪れたときに、カタバミがみんな養生中では困ってしまいますよね。
この対策としては、食草の量を増やしたり、小出しに段階的に提供する方法があります。
幼虫が蛹になる前に食草が尽きてしまうと、申し訳ない気持ちになってしまいます。
あちこち探し回って入手できればよいのですが、できないときもあるでしょう。
食草が不足することのないように量を適切に管理し、蝶の幼虫がいつでもおいしい葉を食べられる環境を整えることが、ガーデンで蝶を楽しむための一つの鍵となります。
ヤマトシジミをもっと惹きつけるには
食草が蝶を惹きつける力はとても強いのですが、蝶が好む「蜜源植物」も一緒に植えれば、なお喜ばれるでしょう。
蜜源植物とは、蝶が好んで蜜を吸う花を咲かせる植物のことです。
蝶は蜜が豊富で、蜜を吸いやすい形をした花を好みます。
さらに、蝶の生息地を参考にして、蝶が好む環境を庭に再現するのも効果的です。
ヤマトシジミが好きな花も一緒に植える
食草のカタバミに加えて、ヤマトシジミが好む蜜源植物も一緒に植えてみませんか?
蝶が好む蜜源植物とは、「好まれる傾向にある」というもので、食草ほど厳密なものではありません。
ヤマトシジミに人気だと評判が高い蜜源植物には次のようなものがありますが、他にもやって来る花はたくさんありますよ。
- カタバミ
- センニチコウ
- メランポジウム
- サンジャクバーベナ
- ブッドレア
- コバノランタナ
- タンポポ
- シロツメクサ
- フジバカマ
- ラベンダー
- ゴーヤーなどウリ科の小さい花……など
蝶が花の蜜を吸う様子を間近で見られるのは、バタフライガーデンの醍醐味ですよね。
ヤマトシジミが好む蜜源植物についても、下の記事で詳しく紹介しています。
ヤマトシジミは開けた日当たりが大好き
蝶にとって快適な環境を庭に整えると、滞在時間が長くなるかもしれません。
蝶が過ごしやすいガーデンをつくるには、その蝶の生息地を知り、そのような環境に似せてガーデンをデザインすることがポイントです。
- ヤマトシジミの生息地は、草原・農地・公園・河川など、明るく開けた環境
- 小型の蝶なので、大型や中型の蝶と比べれば地面近くで活動している
ヤマトシジミに快適に過ごしてもらうには、日当たりが良く、草丈の低い草地のような環境を目指すと良いでしょう。
暖かい日差しの中で翅を広げて日光浴するヤマトシジミの姿を目にすることができるかもしれません。
オスの蝶の翅は青く輝いてきれいですよ。
夕方に、「今晩の宿はここに決めた!」といったおやすみモードのヤマトシジミの姿も見られるかもしれません。
お庭やベランダを、バタフライガーデンに
この記事では、小さくて可憐な蝶「ヤマトシジミ」をガーデンに招く方法をご紹介しました。
でも、食草や蜜源植物を植えて招くことができるのは、ヤマトシジミだけではありません。
住宅地に建つ家の庭やベランダにもやって来る可能性のある「身近な蝶」は約30種類もいます。
バタフライガーデンをつくって、たくさんの魅力的な蝶を招いてみませんか?
バタフライガーデニングは、植物や蝶の美しさを堪能できるだけでなく、自然の営みの中に、自分が一員として繋がっているような喜びも得られますよ。