蝶の食草|お庭にミカンやレモンを植えるとアゲハやクロアゲハがやって来る!
自宅の庭やベランダに蝶が飛んで来る光景を見たいと思ったことはありませんか?
蝶を招くには「蜜源植物」や「食草」といった蝶が好む植物を植えるのが効果的です。
特に食草は蝶を呼び込むための秘密兵器、蝶を招く力は最強です。
蝶は卵を産むために自分たちの食草を探していますから、お庭やベランダに食草を植えれば、蝶がやって来る確率がぐっと高まります。
幼虫が苦手でない方には、ぜひ挑戦してみて欲しい!
たとえば、庭木としても人気の「ミカン」や「レモン」、「キンカン」などのミカン科の果樹は、「アゲハ」や「クロアゲハ」の食草として知られています。
これらの植物を庭やベランダに植えれば、他にも「ナガサキアゲハ」や「カラスアゲハ」、「モンキアゲハ」といった美しい蝶たちもやって来るかもしれません。
ミカン科の植物を植えて、大型で目を引くアゲハチョウたちが舞うガーデンを楽しんでみませんか?
チョウたちの訪問で、あなたのお庭やベランダが、一層魅力的な場所になりますよ。
アゲハチョウは身近な大型の蝶
アゲハ(ナミアゲハ)は日本各地で見られる蝶です。
モンシロチョウと並んで、私たちに最も身近でなじみ深い蝶ですよね。
翅は黒と黄白色のコントラストが美しく、後翅には青と橙の班点があり目を引きます。
新緑を芽吹かせたミカン科の樹木のまわりをアゲハが舞っている姿に、初夏を感じる人も多いのではないでしょうか。
アゲハの生態と特徴
- アゲハチョウ科
- 大型
- 北海道・本州・四国・九州・沖縄に分布
- 成虫が活動するのは4~10月ごろ(多化性)
- 越冬態は蛹
- 訪花性が高い
決まったコースを何度も周遊する「蝶道」を形成するため、一度見た場所で待っていると、また出会える可能性が高いようです。
お庭やベランダをコースに入れてもらえると嬉しいですね。
アゲハの特徴や見分け方などについては、下の記事で詳しく紹介しています。
「クロアゲハ」や「ナガサキアゲハ」についての記事もありますよ。
アゲハやクロアゲハのライフサイクル
アゲハチョウのライフサイクルは、卵、幼虫、蛹、成虫の4つのステージに分かれます。
それぞれのステージにおける特徴と観察ポイントを見ていきましょう。
卵
アゲハは、食草の若葉や、新芽の上に1つずつ卵を産みます。
クロアゲハは、食草の葉の裏に卵を産みます。
卵は、球形で、淡い黄色から橙色に変化していきます。
季節にもよりますが、卵から孵化するまでに約一週間かかります。
幼虫
孵化した幼虫は何度か脱皮しながら大きくなります。
若齢の幼虫は、鳥の糞に擬態しているような姿です。
アゲハの幼虫は乾いているかんじ、クロアゲハは湿って艶があるかんじに見えます。
終齢の幼虫は、黄緑色でお馴染みの姿になります。
アゲハやクロアゲハの幼虫は、「かわいい」と人気ですよね。
幼虫は食欲旺盛で、約3~4週間で十分に成長すると、蛹になる準備を始めます。
蛹
アゲハやクロアゲハの幼虫は、食草の枝で蛹になったり、食草から離れて蛹になったりします。
糸をかけて体をくくりつける「帯蛹型」です。
蛹の色は、周囲の環境に合わせて、緑色系と褐色系の2タイプあります。
約2週間後、劇的な変態を経て成虫になります。
ここまで見守って来ると「無事に羽化してくれ」と祈る日々になります。
アゲハの食草は果樹として人気のミカン科の植物
蝶の幼虫は特定の植物の葉を食べて成長していきます。その特定の植物のことを「食草」と呼び、樹木の場合は「食樹」ということもあります。
アゲハやクロアゲハなど身近なアゲハチョウ科の蝶の多くはミカンなどミカン科の植物を食草としています。
ミカン科の植物には、私たちの食卓を彩ってくれているものがたくさんあります。
ミカンやレモンやライムなどの身近な果実だけでなく、サンショウなどの香辛料もミカン科の植物です。
花は、甘い香りがします。
アゲハたちが食草とするミカン科植物の種類
アゲハたちの幼虫が食草としているミカン科の植物には、次のようなものがあります。
- ミカン
- レモン
- ユズ
- キンカン
- ライム
- サンショウ
- カラスザンショウ
- カラタチ
- コクサギ
- ハマセンダン……など
お庭やベランダのバタフライガーデンに導入するのであれば、ミカンやキンカンなど柑橘類の樹木がおすすめです。
ミカン科の果樹はたくさんの品種が流通していて、苗が手に入りやすいですし、冬には実も楽しめます。
どれもアゲハたちの食草になるので、冬にどの果実を楽しみたいか、ご自身の好みに合わせて選んでください。
ミカン科の食草の入手
植え付け適期の3~4月ごろには、園芸店やホームセンターなどで、さまざまな種類の柑橘の苗が売られていると思います。
庭に地植えすれば大きく育って、たくさんの幼虫を養えるようになりますし、鉢植えでも大きな鉢に植えれば、しっかり育って、実もなりますよ。
何種類かの柑橘類の鉢植えを並べて育てても楽しいかもしれませんね。
ミカン科の食草の育て方
ミカン科の樹木の栽培は比較的やさしいです。
次のポイントに注意して挑戦してみてください。
- 日当たりを好む
- 春先の剪定も日の当たり方を考慮して行う
- 新芽を出す春と、花を咲かせる初夏の肥料を忘れずに
- 果実の収穫期の水やりは控えめにするが、それ以外の時期は普通に水やりをする
- レモンなど一部の品種は、寒さにあまり強くないので霜よけをする
- おいしい実を楽しむためには、葉の量に合わせて実の摘果をする
ミカン科の食草の増やし方
ミカン科の果樹などは一般的には接ぎ木で増やしていきます。
接ぎ木は挿し木よりも難易度が高く、あまり一般ガーデナー向けではないように思います。
やはり苗を購入して来るのが良いですが、のんびり構えられる場合、種を蒔いてみるのも楽しいかもしれません。
食べた柑橘類の果実に入っていた種を蒔くことができます。
品種改良が進んでいる種類の場合、種を蒔いても、果実は親と同じものにはならない可能性が高いですが、蝶の食草としては十分です。
種のまわりのぬるぬるした薄皮をとり、湿らせたキッチンペーパーなどの上で発根させてから土に埋める方法が、管理しやすいでしょう。
発根まで、キッチンペーパーを清潔に保ち、通気口を開けた空き箱などをかぶせて、暗くしておきましょう。
気温にもよりますが、発芽日数は1~2週間くらいです。
年間を通じた食草管理
アゲハやクロアゲハ、ナガサキアゲハ、カラスアゲハ、モンキアゲハは年に数世代を繰り返す多化性の蝶です。
蝶が活動する春から秋まで、いつでも食草を提供するために、年間を通した食草の管理を考えてみてはいかがでしょうか?
食草の年間スケジュールを組む
蝶の活動期間中は食草の需要があるので、いつでも食べる葉っぱがあるのが理想です。
しかし、植物にもそれぞれに生育条件があり、異なります。
そんな植物の生態を踏まえつつ、食草の年間スケジュールを組んでいきます。
時期から考える
ミカン科の場合、ミカン科の植物が常緑樹で一年中葉を茂らせているため、時期の問題はありません。
蝶は柔らかい新芽が好きなので、寒さが和らいだ3月頃、まだアゲハたちが蛹から羽化する前に、春剪定をしておきましょう。
量から考える
問題が起こるとすれば量の方です。
アゲハなど大型のチョウの幼虫たちは食欲が旺盛なので、食草の量が少ないと、エサ不足問題に悩まされがちです。
樹木が大きく育った後は、たくさんの幼虫を安心して養えるのですが、それまでの成長段階では少し配慮が必要です。
苗が小さいうちなどは特に、幼虫の食欲の方が勝ってしまい、樹木が丸坊主になってしまうこともありえます。
食べられた食草の回復
植物の株が小さい場合、葉っぱを幼虫に食べ尽くされてしまうこともあります。
食べられてしまった株には、しばらく回復期間を設ける必要があります。
植物が再び葉を芽吹かせて元の状態に戻るまで、養生させてあげましょう。
回復中の植物に新たに卵が産み付けられてしまわないように、保護ネットなどを掛けると効果的です。
食草の提供方法のアイデア
アゲハたちがガーデンを訪れたときに、食草がみんな養生中では残念ですよね。
また、幼虫が蛹になる前に食草が尽きてしまうと、申し訳ない気持ちになってしまいます。
あちこち探し回って追加の食草を入手できればよいのですが、無農薬のものを手に入れるのはなかなか難しく、入手できないことの方が多いでしょう。
対策としては、植える食草の量を増やしたり、鉢植えの場合は小出しにローテーションして提供する方法が有効です。
食草が不足することのないように量と時差を意識して、蝶の幼虫がいつでもおいしい葉を食べられる環境を整えることも、ガーデンで蝶を楽しむための一つの鍵となります。
アゲハやクロアゲハをもっと惹きつけるには
食草が蝶を惹きつける力はとても強いのですが、蝶が好む「蜜源植物」も一緒に植えれば、なお喜ばれるでしょう。
蜜源植物とは、蝶が好んで蜜を吸う花を咲かせる植物のことです。
蝶は蜜が豊富で、蜜を吸いやすい形をした花を好みます。
さらに、蝶の生息地を参考にして、蝶が好む環境を庭に再現するのも効果的です。
アゲハたちが好きな花も一緒に植えたい
ミカン科の食草に加えて、アゲハたちが好む蜜源植物も一緒に植えてみませんか?
蜜源植物は、「好まれる傾向にある」というもので、食草ほど厳密なものではありません。
アゲハに人気だと評判が高い蜜源植物には次のようなものがありますが、他にもやって来る花はたくさんありますよ。
- ブッドレア
- サンジャクバーベナ
- バーベナ・リギダ
- ムシトリナデシコ
- ヒャクニチソウ/ジニア
- モナルダ
- ヒガンバナ
- コバノランタナ
- ヤマユリ
- ツツジ……など
蝶が花の蜜を吸う様子を間近で見られるのは、バタフライガーデンの醍醐味ですよね。
アゲハやクロアゲハが好む蜜源植物についても、下の記事で詳しく紹介しています。
アゲハは開けた日当たりが大好き
蝶にとって快適な環境を庭に整えると、滞在時間が長くなるかもしれません。
蝶が過ごしやすいガーデンをつくるには、その蝶の生息地を知り、そのような環境に似せてガーデンをデザインすることがポイントです。
- アゲハの生息地は、林縁・農地・公園など、明るい林縁環境
- クロアゲハなど翅が黒い蝶は、アゲハよりも少し薄暗い環境を好む
林縁とは、森や林などの樹林から草原のような草地へなだらかに移行していく、その中間部のような環境のことです。
アゲハたちに快適に過ごしてもらうには、日当たりが良く、樹木が少しある、草丈が高めの草地のような環境を目指すと良いでしょう。
ガーデンの中で、優雅に高くまで舞い上がるアゲハたちの姿を目撃できるかもしれません。
お庭やベランダを、バタフライガーデンに
この記事では、ガーデンにミカン科植物を植えることで、なじみ深い蝶である「アゲハ」「クロアゲハ」「ナガサキアゲハ」「カラスアゲハ」「モンキアゲハ」を招く方法をご紹介しました。
でも、ガーデンに食草や蜜源植物を植えて招くことができるのは、アゲハたちだけではありません。
住宅地に建つ家の庭やベランダにもやって来る可能性のある「身近な蝶」は約30種類もいます。
バタフライガーデンをつくって、たくさんの魅力的な蝶を招いてみませんか?
バタフライガーデニングは、植物や蝶の美しさを堪能できるだけでなく、自然の営みの中に、自分が一員として繋がっているような喜びも得られますよ。